友人と二人、
居酒屋で飲んでいた時のこと・・・。
 

髪をツンツンさせチャラそうな
男子が目の前にやってきた。

 
『せっくの女子会を
お邪魔して申し訳ありません。
宜しければ、乾杯をさせて頂けませんか?』



その口調は丁寧すぎて、まるで仕事。
我々はあまりの腰の低さに驚いた、
保険の勧誘であろうか。 



『僕のことを紹介させてください。
名前をA男と申します。
●●線の電車の運転手をしています』


どこの誰ともわからない女どもに
個人情報を垂れ流す、垂れ流す。
彼は一人で飲んでいたようだ。



脳内まともレーダーが働きだした。
・・・婚活中の友に紹介するチャンスか!?


聞けば男だらけの職場で
年上の先輩に紹介を頼まれるも
全く知り合いがおらず、
思い切って声をかけてみたとのこと。


マナー教室の講師かと言いたくなるような、
美しい言動が続く彼。


彼のオープン具合に
疑い深い我々の警戒心も失せた。



思えば婚活時代は
探り合いであったな・・・。

 
いかに相手に直接聞かずに、
言葉の節々で想像力を働かせたものか。


彼女はいるのか?
本当はどんな人なのか?


そもそも、独身なのかーーー!?


探り合いですらないか・・・、
こちらから一方的に問題視していただけ。

一体、何を守っていたのだろうか・・・。


『キン斗雲に乗れるレベルの、
清らかな心を持っているねー!』

 

彼の誠実さに感心し、口に出した。

 
しかし世代が違いすぎて、
キン斗雲が通じなかった・・・辛い。 


 
 
彼は結婚相手を求めているというので、
独身の友人を紹介すると約束した。


本当に・・・
どこに出すのも恥ずかしくない青年に見えた。

 
友人の紹介ですら
とんでもない者が出てくる婚活界。
街中でも誠実男子がいたとは。


紹介の日程を決めていると、
彼は何かを思いついたようだ。


『あ、僕は出身が●●県なのですが、
田舎には兄弟がいます。
結婚して両親の近くに住んでいるので、
その辺りもご安心ください。
社宅も沢山ありますし、
福利厚生も抜群ですよ!』
 

・・・採用面接か!!
 

職場の写真&動画も見せてくれた。
確かに制服を着ている。
コスプレではなさそうだ。


彼がもし結婚詐欺師であったら、
諦めるしかない完璧な振る舞いであった。



人間の出会いとは、
本来こうあるべきであったのか・・・。
まずは自分から心を開いて、歩み寄る。

 
人間国宝級の青年から、教えてもらった。


彼のことを陰で『国宝』と呼び、
合コンをセッティングした。


ところが、
国宝の皮がポロリと剥けた・・・!


後半へ続く・・・。