『あの女、そろそろ捨てよっかなー』
『おぉ、飽きるよな』


こんな下品なやり取りが
電車内に響き渡る。


どうやら私の目の前に
立っている二人組のようだ。


・・・顔が見たい!!



公衆の面前で強気な発言を
している彼らだ。


女遊びの手練で
調子に乗った輩なのだろう。


彼らはさらに
いい男発言を炸裂させていた。


女がどーのこーの、
延々と話し続ける。


乗客は異様に静まりかえっており、 
皆が耳を澄ませている空気を感じた。


それぐらい声がでかく、
聞いているこちらが恥ずかしい。


まだ女を捨てただの、
抱いただの話している。


正気なのか彼らは。
あぁ、顔が見たい。


好奇心に任せてチラ見しようものなら
この話に反応したとバレバレだ。


が、後悔したくない・・・!
意を決して彼らを覗き込んでみた。


そこにいたのは
ジャガイモ風の男性が2個、いや二人。


・・・まさか、こいつらが!


服装も垢抜けず、
小太りなタンク体型。


どの口が言う、
あんな台詞の数々をー。




これと似たパターンもあった。


あれは不甲斐ない
合コンの帰り道である。


酒に酔った友人が


『皆、綺麗だし、絶対いい男に出会えるよ!大丈夫!』


ひたすら仲間の容姿を褒め称え、
出会いはある!と大声で繰り返した。


その声は電車内に
響き渡るくらいのデカさだ。


人様から見たら、
荒れている女たちでしかない。


頼むから黙ってくれ、 
あのジャガイモ側に立ってしまった。


それほど他人は自分のことなど
見ていないのは承知であるが、
内容が内容だけに
声が大きければ注目度は上がってしまう。


私は黙って俯いた。
他人のフリより他なし。


今思うと、
出会いもなく
合コンにも惨敗した我ら。


未来に希望を持たせてやろうと、
友人なりの気遣いだったのかもしれない。 


実はあのジャガイモたちも、
モテなくて苦しんでいたのも。


彼らなりの心の防衛だったのか。


強がりたい夜を迎えたら、
気の置けない友人にコッソリぶつけよう。


公共の場所では己を抑える、 
それが大人のたしなみであった。

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