私は一瞬、婚活パーティで
司会のアルバイトをしていた。


そこにある常連の男性がいた。


彼はとにかく
若く美しい女性を好んだ。


自身は豆タンクのような容姿の、
ちんちくりんの50代。


我々スタッフに対しては
フレンドリーに話しかけてくるのだが
その内容が非常にマズい。


『今日はいい女いねぇよなぁ~!?』


タンクよ、でかい声を出すんじゃない。


その台詞を吐く前に、
己の姿から鏡でしかと見てくれ。


そして、同意を求めないでくれー!


『そうですね~』なんて適当に流せない。
彼に捕まると非常に苦しい時間が続く。


お客がお客の文句を言うのは、
最も対応に困るのだ。

それでも彼は400回以上は参加していた。
何年もかけ、ずっと通っていたのだ。
(ちなみに参加数百回クラスの常連はゴロゴロ)


もちろん彼は女性からの人気はなかった。


決して悪人ではなかったが、
集客要素はゼロに近かった。


いい所といえば・・・
声が大きいことだ。
肺活量はかなりある。


私が知る限りメッセージカード
(異性から貰う、連絡先など書かれたもの) を
一度も貰っていないはずだ。


パーティの最後にカードを配るのだが、
彼はいつも一足先に会場を後にする。


我々が集計しているうちに
いつの間にか姿を消すのだ. 


『タンクさん・・・。
カードが貰えないのを、わかっているんですね』


ちょっと切なくなったが、
古いスタッフがこう言った。


『あの人、昔からわかっているんだよ。
自分が不人気なのは』


女性への要求はすこぶる高いのに、
己のレベルを理解しているなんて複雑だ。


そんなある日、
奇跡が起きたのである・・・!


いつものごとく、
彼は早々に会場を去った。


その背中を見送った後、
私はカードの集計をしていた。


その時、息をのんだ。


『・・・タンクさんに、カードが来ています!!!』


初めて見た・・・。
ついに彼にも女性からメッセージが。


追いかけて渡そうと思ったが、
既にいない。


『最後のチャンスです。早く渡さないと!』


飛び出しそうな私に向かって、
古いスタッフが言った。


『いや、たまーーに、あるんだよ!
自分で書いたんじゃないかって、
いつも言われているけどね~!』


・・・切なすぎるではないか。
自作自演を疑われる彼。
真相は謎のままである。


きっと近々、
また参加してくるだろうから、
念のためカードは預かっておこう。


不思議なものだ。
自身の人気のなさを実感していても、
相手に対する理想は高い。


数百回もパーティに行く前に、
どこかで気がつくはずなのだが・・・!


とことん理想を求めていたら、
半世紀経ってしまったということか・・・。


それはそれで、人生色々である。


 
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