友人たちと、

食事をしていたときのこと・・・。

 
 

『ぎゃー!またやった!』

 

A子が眉をひそめた。


 

どうやら店員の男性が

自身の顔ばかり触っているようだ。

 
 

まさか、
そんなことしないだろう~。


 

ふと見ると汗だくの彼がテカる顔を

撫でまわしながらやってくるではないか。

 
 

大胆に手のひらを転がし、

デコからアゴまで滑らかに移動させる。


 

お・れ・を・み・て・く・れ♪


 

そんな雰囲気を漂わせながら、

ノリノリで店内を歩き回る。

 
 

帰った客の食器も下げないまま、

顔を撫でながら、
謎のウォーキングを続けている。

 
 

優先順位が違う。

触るものは、顔より皿だ。

 
 

その日は花火大会があったので、

浴衣ギャルが通りかかる度に

彼は張り切って店外に出て行った。

 
 

ところが大声張って
呼び込みをするでもなく、

ただ己の存在をアピールするのみ。

しっかりと顔を撫でながら。



その頃、入店して30分ほど経った

隣の席の女性がキレだした。

 
 

『モヒート1杯出すのに、
こんな時間かかるのっ!?』

 

 

それもそのはず、

店員たちは暇そうに談笑していたのだ。

 
 

酒の1杯くらい、
さっさと出してやってくれ。

 
 

彼女の怒りは増幅していくが、

彼らは気付く様子もない・・・。

いかん、限界が近いぞ。

 
 

『ほんと不愉快な店っ!二度と来ないわ!』

 
 

注文も全てキャンセルし、

憤慨して帰ってしまったのだ。

 
 

彼らもサボりすぎを自覚したのか、

突然、客におしぼりを配り出した。

 
 

顔をいじくり回した手で、

こんなものを配らないでくれー!

思わず裏返しで使用、スマン。

 
 

『いや~すみませんねぇ~料理が遅くって~♪』

 
 

悪びれもなく言い放った。

もちろん、ちゃんと撫でながら。

 
 

その不気味な口調と動きに、

友人たちがまたゾっとしていた。

 
 

おしぼりよりも料理をくれ・・・!

もう1時間近く、経過しておる。

 
 

周りを見ると、

どのテーブルも食べ物が出ていない。


 

この店、来年はないだろう・・・。

我々は呟きながら、早々に立ち去った。

 



それにしても、

無意識の癖というものは恐ろしい。

 


顔を触ってはいけない法律はないが、

時と場所によっては他人に恐怖を与える。

 
 

一度他人に気付かれると、

そこばかり注目される故、

出会いの場では大ダメージである。

 
 

ちなみに彼は歩きながら

キメ顔を作る癖も持ち合わせていた。

 

 

撫でながら、キメ顔・・・。

 
 

同時に2つのことをできるとは、

マルチタスクな男ではある。

仕事に生かせなかったのが惜しい。

 

 


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