友人A子(20代)の携帯電話が鳴った。


『男だけで遊んでいるので、
今から合流しよう!』との内容だ。


電話の主は当時
ブレイクしていた芸人であった。

 
そんな知り合いがいたとは・・・驚いた。
ほどなくして彼らと合流できた。


テレビで連日見かける有名芸人と、
見たこともない無名芸人であった。


田舎者の私はちょっと感動、
これぞTOKYOだ〜!


テレビでは控えめに見えた彼だったが、
『俺はモテるぜ』オーラ・全開でやってきた。


実際に売れっ子なので仕方がない、
しばし様子を見よう。


彼はカラオケに行きたいと言い出した。
はいはい、どこでもいきますよ。
我々は庶民なのだから。

 
カラオケの受付にて、異変が起こった。


彼は首を後ろに曲げながら、
自分の掌を前にかざして顔を隠した。


『俺の顔を見るんじゃないぞ』
とでも言いたいようだ。


特徴のない顔なので、
普通にしていたらまず気付かれない。

 

自らわざわざ、
目立つことをするな。

 

私の目には、
『俺を見てくださーい!』に見えた。


ここに何かがありますよ・・・!と、
自ら提示しているようなものだ。


我々はそのまま部屋に通された。

 
すると今度は、
A子に異変が起こったのだ。


『●●●(芸人の名前)ちゃ~ん♡』


甘い声を出して、
彼にしなだれかかったのだ。


普段はクールな女なので面食らった。
友よ、こんな一面があったのかい・・・。


いきなり新キャラを出されると、
驚くじゃないか。
予告しといてくれよ。 


彼もノリノリで、
A子といちゃつき出す始末。


片割れの無名芸人と私は
どうしてよいのかわからず
呆然と眺めた。


店員が飲み物を持ってくるたびに
芸人は掌をかざすポーズで
あからさまに顔を隠し続けた。


パパラッチから顔を隠す、
ハリウッドスターのようだ。


大丈夫・・・あんたの顔は
世界レベルで売れてはいない。
 

さらにバージョンアップし、
A子の後ろに大げさに
隠れながらのポージングも加わった。

 

不自然な動きすぎて、
余計に目立つではないかー。


何度も言うが、
そこまで知られていない。


努力の甲斐あって、
ちゃんと店員は気付いていたと思う。

 

そんな空気を感じた。

 

酔っ払ってヘロヘロになった彼は
道で私にも抱きついてきた。


個室で顔を隠すくせに、
公道で女に抱きつくんじゃない。


目立ちたいのか、
目立ちたくないのか、はっきりせんかい!


サンプル


彼はその後、
しっかりした奥さんの
監視下に置かれたようで
二度と現れることはなかった・・・。


毒にも薬にもならない一夜であった。





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