通勤ラッシュが少し落ち着いた頃・・・・。
平和な車内に鋭い空気が流れた。


『あれぇ、逃げるんですかぁ!?』
『はぁ!?何言ってるんですかっ!?』


30代くらいの男女が激しく揉めている。


お互いを掴み合いながら、
電車になだれ込んできた。


なんだなんだ、痴漢騒動か。


いや、違うな・・・。
男の方がドヤ顔をして攻めている。


『あなたの責任なんですからねぇ!?
わかってますよねぇ~!?』


何とも耳障りな声と話し方だ・・・。


彼が被害に遭ったのだとしても、
心から同情できるのか不安になった。


『私があの場所に立ってたの、知ってますよね!?』

 
女性も怒りの反撃。
地味な方だったが、語気鋭く言い放った。


お互い一歩も譲らない攻防戦。


一体何が原因なのか?
乗客の耳は一斉に集中モードに。


C4B826A7-4BAB-459C-9512-12108BFF0BA4


お前が悪い、いや知らん、
こんなやり取りが何往復か続く。


『お金、早く出してくださいよぉぉ?』

 
男性が粘っこい口調で責め立てた。
彼が指先でチラつかせているのは、
小さな缶ジュース。


あれは・・・!
飲んでみたいと思っていた
愛のスコールではないか。
J1468-J1469-J1470
どういうシチュエーションだか謎だが、
彼の望まないジュースが出てきてしまい、
その原因が女性にあるようだ・・・。
 

乗客一同、
『く・・・くだらねぇーっ!!』
という空気に包まれた。


どちらかが『ごめんなさい』で
済んだ話であろうに。


小さなボヤ騒ぎであったはずが、
山火事へと拡大。


『駅員さんのところに行きましょうかぁっ?』


まるで痴漢を捕まえたかのように
勝ち誇った口調の男。


こんな朝のクソ忙しいときに、
駅員さんを困らせるんじゃない。


彼は彼女の腕を掴みかかったが、
全力で拒否されていた。


『あ、ドロボウゥゥ~!ドロボゥ~!』


男は女を泥棒呼ばわりした。
もう見ていているほうが恥ずかしい。


次の駅で、
二人は揉み合うように降りていく。


謎の嵐は過ぎ去った・・・。
都心の通勤事情が招いた惨事である。


『なんならそのジュース、私が買い取ります?』


あぁ、この一言が言えたら・・・!!


しかし、できなかった。
どうしても彼からは買いたくなかったのだ。


あの嫌味ったらしい口調に、
人を挑発するような憎たらしい態度。


もし彼が合コンに来たら
・・・きっとこんな感じかな。


『はーい、君は飲んだから5,689円ねぇ?
君は一品多かったから、6,745円ねぇ?』


なんて妄想まで膨らまし、
どうやったらこのような男とならないか、
育児法まで真剣に考えていた。


要らぬジュースを押しつけられて、
気の毒なのは彼の方かもしれないが! 


『誰から買いたいのか?』とは、
消費者にとっては案外重要なのである。


彼から買うならば、
無機質な自販機から買いたい・・・!!
心証をよくしておくのは大事である。

 
162


普段の彼は穏やかで性格も良くて、
高収入のモテ男かもしれない。(0.001%くらいの確率で)


ところがあの一瞬の争いで、
全てを失った。


第一印象は数秒で決まるとはよく言ったものだ・・・。


せっかくいい武器を持っていても、
『この人から買いたい!』
と思われないと宝の持ち腐れである。


逆に大した武器を持っていなくても、
『この人から買いたい!』と
思わせたら思わぬ高値で売れることもある。


やはり女は愛嬌だな。

 
電車の中で強く確信したのであった。

 

【サブブログ】育児編はこちらです↓↓
8EAF5E37-503D-47B4-9522-625E55E223EF


【愛用品シリーズはこちらにまとめてあります♪】





【書籍情報】